【第56回】配当金を受け取ったら確定申告で配当控除をしよう

株式を保有することで銘柄によっては配当金を受け取ることができます。

この配当金を受け取る際にも税金が発生し、通常であれば20.315%源泉徴収された上で自分の口座に振り込まれます。

しかし、手取り年収が695万円以下の方であれば確定申告をすることで配当金にかかる税金を安く抑えられる可能性があるため、これに関して解説していこうと思います。

目次

配当金は申告分離課税

給与所得や農業による事業所得は総合課税といって収入の大きさで課税される税率が異なります。

一方株式、配当金、FXによって得られたお金は、一律20.315%の税金が課税されます。

またその20.315%の内訳としては15.315%が所得税で5%が住民税になっています。

ちなみに特定口座で源泉徴収ありで株式投資を行っている場合、株式の売買時や配当金の受け取り時に証券会社が税金を払ってくれています。

少し話がそれましたが通常の給与は総合課税、株式等は申告分離課税と税金のかかり方が全く異なるのです。

総合課税と分離課税の違い

配当金にかかる税金を計算してみよう

計算がしやすいように1年間に受け取った配当金を10万円と想定して計算していこうと思いまうす

申告分離課税の場合、一律で20.315%が課税されるため、特定口座の源泉徴収ありで取引している場合は20,315円が差し引かれ実際は79,685円振り込まれることになります。

このときの内訳としては所得税分が15,315円住民税が5,000円分として税金を納めたことになっています。

では次に配当控除についての解説と実際にどれくらい税金が安くなるのかを計算してみましょう。

配当控除とは

配当控除とは本来申告分離課税として申告する配当金を総合課税の所得として計算することで配当金に対して10%の控除を受けることができます。また住民税では2.8%の控除を受けることができます。

 

なんて言ってるかわかりましたか?笑 なるほどわからんって感じですね。

要するに本来給料とは別で計算される配当金を給料と同じ収入として扱い、それによって税負担を減らすことができる制度です。

実際に計算してみましょう

マイナビのサイトに源泉徴収票の例があったのでその画像をお借りし、1年間に受け取った配当金を10万円とした上で計算したいと思います。

支払金額と書かれた金額が年収で、給与所得控除後の金額から所得控除の額の合計を引いた金額が課税される所得金額となり、今回の場合は5%の税率が適応となるため源泉徴収額は2,130,000から874,500に5%を掛けて62,775円となっています。

想定
  • 年収3,300,000円 
  • 課税される所得額1,250,000円
  • 源泉徴収税額62,775円(所得税率5%)
  • この年に受け取った配当金100,000円

配当金が申告分離課税の場合

まずは配当金が申告分離課税の場合を計算します。

この場合配当金にかかる税金は20.315%となり20,315円となります。このときの所得税分が15,315円で住民税分が5,000円になります。このときに払わなければならない所得税は源泉徴収額と合わせて78,090円となります。

この住民税は一律10%であるため、125,000円と配当分の5,000円をあわせて130,000円の住民税を収めることになります。

配当控除をしない場合の内訳
配当控除を適当しない場合
  • 所得税 78,090円
  • 住民税 130,000円

配当控除を受ける場合

配当控除を受け取るには配当金を申告分離課税ではなく給与の収入と合算する必要があります。

そうすると所得控除後の所得が1,255,000円→1,355,000円となります。ここから所得税率の5%をかけると67,750円となります。

次に配当控除は受け取った配当金の10%を支払う所得税から引き算することができます。

このため67,750円から10,000円を差し引くことで57,750円となり、ここに復興特別税2.1%が加算されるため納める所得税は58,962円となりました。

申告分離課税と比較すると配当控除を受けた場合19,128円も所得税が安くなりました

次にこの場合の住民税は135,500円から配当金の2.8%(2,800円)を控除できるため、実際に支払う住民税は132,700円となります。

このため、配当控除を受けた場合、6,700円住民税が高くなりました。

この住民税は翌年の6月から支払うことになります。一方で所得税は確定申告によって還付を受けることができますので解説していきます。

配当控除をした場合
配当控除を適当する場合
  • 所得税 78,090円→58,988円 安くなる
  • 住民税 130,000円→132,200円 高くなる

配当控除で還付金をもらう方法

所得税は確定申告で還付を受けることができるわけですが記入例を作成しました。

申告書は想定としては副業をしていない前提なので申告書Aで作成しており、平成時代の源泉徴収票のため基礎控除は38万円で計算されています。(令和2年からは48万円)

これを郵送で送る場合は源泉徴収票と証券会社の年間取引報告書を添付する必要がありますのでご注意ください。e-TAXで送る場合は添付は不要ですし、郵送代もかからないのでお勧めです。

住民税は申告不要制度を利用

配当控除を利用した場合は住民税負担が大きくなってしまいます。これは分離課税の場合の住民税は5%ですが、総合課税の場合は10%となるため2.8%の控除分を考慮しても負担が大きくなってしまうためです。

しかし2017年以降はこの配当金にかかる所得税と住民税はそれぞれ総合課税か分離課税かいずれかを選択できるようになりました。

結論から言えば所得税では総合課税で申告、住民税は分離課税を利用するといった選択を取ることで節税効果が高いです。これをするには申告不要制度を利用する必要があります。

民税の申告不要制度は各市区町村の役場で確定申告とは別に行う必要があります。また、申し込み時に必要な書類や記入の形式が各市区町村で異なるためご自分のお住いの役場で確認する必要があります。

2022年の確定申告から申告時に申告不要制度を同時に行うことが可能になりました。

ある自治体の1例 必要書類

申告期限は3月15日までと確定申告と同じ期限です。

申告不要制度を利用した最大節税額

これまでに解説した配当控除と住民税の申告不要制度を利用するとどれだけ税金が安くなるのか見てみましょう。

所得税は配当控除を利用すると58,962円で、住民税は申告不要制度を利用すると130,000円になり合計すると188,962円となり1番最初の合計額208,090円と比べると19,128円の差額が還付されることになります。

計算は慣れてしまえば非常にシンプルですのでこれができれば数万円戻ってくるんだ!!というモチベーションで頑張ってみてはいかがでしょうか?

問い合わせからメールいただければ相談にも乗ります

まとめ
  • 配当金にかかる税金には総合課税と分離課税があり、どちらか選択できる
  • 総合課税の場合、配当金に対して10%の配当控除が受けられる
  • 確定申告をすると税金が安くなる目安は所得が695万以下
  • 住民税は確定申告時に申告不要制度を申込すると分離課税のまま課税される

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