【第53回】世襲農家の悩み、農地の相続

兼業農家として抱える最大の問題である相続。現在31歳で家督を継いでいる身なのですが、養母が現在89歳でまだまだ元気ではありますがどうしても死んでしまった後のことを想像してしまいます。

一番最初に思うのはやっぱり養母名義の土地とかの相続はどうやってやるんだろう?とかお金のことより相続手続きのことが先に悩みになります。世襲農家の方ならこの悩みは分かってもらえるのではないでしょうか?

近所での話でそういった手続きを司法書士に依頼したら40万以上費用がかかったとかも聞きまして、これはなるべく自分で知っておいた方がいいなと思い、ファイナンシャルプランナーの資格取得の勉強をしていたので少しばかり解説したいと思います。

目次

法定相続人の順番とその範囲

まずは自分の家系図を作ってどういった関係性であるかを明らかにしましょう。私は母方の家に養子縁組として祖母の息子になっています。また、すでに祖父は亡くなっています。

我が家の場合、考えないといけないのは祖母(養母)が亡くなった場合です。

もし祖母(養母)が亡くなった場合、法定相続人となるのは母と私の2人です。

ただし、仮に私が既に死去していた場合は私の子供2人と母が法定相続人に、母が既に死去していた場合は私と兄と妹が法定相続人に、私と母が亡くなっていた場合は私の子2人と兄と妹が法定相続人になります。

我が家の血縁関係
祖母(養母)が亡くなった場合
  • 私と母が法定相続人になる(2人)
  • 私が既に死去していた場合、私の子2人と母が法定相続人になる。(3人)
  • 母が既に死去していた場合、私と兄と妹が法定相続人になる。(3人)
  • 私と母が既に死去していた場合、私の子2人と兄と妹が法定相続人になる。(4人)

法定相続人を確定するために故人の戸籍は調べておこう

通常であればさっきの図で法定相続人を決定すればよいのですが必ず故人の生まれてから亡くなるまでの戸籍は調べておく必要があります。

これがなぜかというと実は祖母に離婚歴があり前夫との間に子供がいた、なんてことが明らかになる場合があるからです。

この場合はその前夫の子も法定相続人となりますので勝手に財産分与を行うことは法的にはアウトになってしまうのです

しかも離婚歴みたいなのがもしあった場合自分の子供に打ち明けるようなことはおそらくしないと思います。文字通り墓場まで持っていく話になると思うのでないとは思っていても、まず最初に調べておく必要は必ずあると思います

法定相続人を決定するには
必ず故人出生時から亡くなるまでの全ての戸籍を取り寄せて誰が相続人になるかを調べる

遺産の相続分

相続財産は故人の子供の場合は均等に分けられます。

私と母が相続人であった場合は半分ずつ、もし私の子供や兄妹に相続される場合はさらにその半分ずつを相続することができます。

もし、亡くなった人に配偶者がいた場合は配偶者が相続財産の半分を相続することができますそして、その子たちには残った半分を均等になるように分けることができます。

それぞれの場合の財産分与割合
遺産の相続割合
  • 私と母が法定相続人になる(2人)⇒私:1/2、母:1/2
  • 私が既に死去していた場合、私の子2人と母が法定相続人になる。(3人)⇒子:1/4ずつ、母:1/2
  • 母が既に死去していた場合、私と兄と妹が法定相続人になる。(3人)⇒私:1/2、兄妹:1/4す
  • 私と母が既に死去していた場合、私の子2人と兄と妹が法定相続人になる。(4人)⇒子:1/4づつ、兄妹:1/4づつ

どんなものが遺産になるのか

財産分与の割合が決まったら今度はどんな財産があるのかを調べます。財産にはプラスの物とマイナスの物、遺産分割されない物と大きく分けて3つの財産があります。

プラスの財産

  • 現金、預貯金
  • 不動産(土地、建物)
  • 有価証券(株式など)
  • 借地権
  • 知的財産権(著作権、商標権、特許権など)

マイナスの財産 

  • 借入金、買掛金、未払金(住宅ローン、事業の運転資金、未払い家賃など)
  • 連帯債務、保証債務
  • 損害賠償の債務
  • 未払いの税金(所得税、住民税、固定資産税など)

遺産分割されない財産 

  • 家系図
  • 祭具(位牌、仏壇、神棚)
  • 墳墓(墓石、墓碑、遺骨)
  • 葬儀費用(常識の範囲内で極端に華美でない)

農地の評価額の計算方法

では本題の農地の評価額を求めたいと思います。どうやって求めるかというと、毎年6月頃になると市区町村から固定資産税・都市計画税納税通知書がやってきます。

ここには毎年支払わなければならない固定資産税が記載されていますので、ここに記載された金額を元にさらに計算する必要がある場合があります

私が相続する予定の家と土地の通知書が必要になるため、こちらになるのでこれを元に計算していきたいと思います。

土地は路線価か倍率で評価する

私が相続する予定の固定資産の区分としては大きく土地と家屋があり農地の場合、土地の方に区分されます。

地目・構造が田の土地を見ると面積が上の段で40500m2となり評価額は56,619円となっています。しかし実際にはこれが田んぼの価値にはならず別の表を使って調べなければなりません。

その別の表が路線価もしくは倍率方式となります。

路線価方式とは

宅地(土地や家屋を含む意味)を評価する方法の一つで、国税庁が道路ごとに1m2あたりの価格を定めており、自分の土地がどの道路に接しているかで土地の価格を評価する方法です。

また土地の評価にあたっては様々な補正率が出てきます。それに関しては国税庁のページ内で確認する必要がありますので各自ご確認ください。

また、以下の資料は内田麻由子監修いちばん親切な相続税の本からの出典です。

1方向のみが道路に面する場合

道路からの奥行き距離に応じて地区区分ごとに奥行価格補正率が定められています。これを路線価と面積の掛け算にまた掛け算してやる必要があります。

2方向(正面・側方)が道路に面する角地の場合

宅地が正面と側方で道路に接している場合には、利便性が良い土地と判断され土地評価額が上がります。この時適応されるのが側方路線価影響加算率です。

このときの正面は評価額の高い方が正面とみなされます。(評価額×奥行価格補正率の金額)

2方向(正面・裏側)が道路に面する場合

正面と裏面で道路に接している場合には、利便性が高いと判断され評価額が上がります。この時に適応となるのが二方路線影響加算率です。

間口が狭い宅地の場合、奥行きが長い宅地の場合

宅地が路線と接している間口が狭い場合、利用価値が下がり評価額が低くなります。この時に適応となるのが間口狭小補正率です。(左図)

間口の割に奥行きが長い土地の場合も利便性の悪さから評価額が低くなります。この時に適応となるのが奥行長大補正率です。(右図)

倍率方式とは

基本的に土地の評価は路線価で評価されるのですがすべての地域が路線価で評価されているわけではありません。

兼業農家が住むような超ド級の田舎には道路に価値などないのです(笑)

そういった場合はまた国税庁の倍率表に従って前述の固定資産税の評価額に対して何倍するかが決まっています。それが倍率方式と呼ばれています。

私の相続予定の土地もすべて倍率方式による計算で評価されるような地域です。

私の住む地区の場合は固定資産評価額にかける倍率は宅地には1.1倍、国道沿いの田んぼには11倍それ以外の地域の田んぼは9.3倍と決められていました。

そして私が相続する予定の田んぼは国道沿いだったため固定資産評価額に11倍した金額が実際の田んぼの価値ということになります。

前述の固定資産評価額からそれぞれ計算すると以下のようになり、合計額が14,263,949円となりました。

これが土地の相続額となり、ほかの資産との合計計算していく必要があります。

農地の場合は農業委員会にも届出が必要

通常の宅地であれば各自治体の法務局に出向きそこで相続登記の手続きをすれば完了しますが、農地の場合はそれだけでは完了しません。

市区町村の役所にある農業委員会にも相続の申告を行い、手続きを行う必要があります。

手続きに必要な書類等が何かを調べようと私の住む自治体のホームページを調べましたが詳細は得られませんでした。どうやら電話等で直接聞かなければいけないようなのでまた調べておきます。

まとめ 

相続と土地の評価
  • 相続が発生した場合、家系図から法定相続人を決定しなければならない
  • 相続する財産にはプラス、マイナス、遺産分割されない財産に分けることができる
  • 土地の場合、路線価方式と倍率方式で計算方法が異なり、国税庁のホームページで調べなければならない
  • 農地の相続は法務局だけでなく各自治体の農業委員会にも申告する必要がある

今回は私自身の例で計算をしてみました。意外と土地の値段だけでもこんな金額になるのだなぁと驚きました。

皆さんも一度自分の土地でもいいので計算してみてはいかがでしょうか。

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