【第15回】ふるさと納税を理解しよう

2008年より始まったふるさと納税制度。過去には5000億円以上の寄付金がされたこともある今やだれもが知っている誰にでもできるふるさと納税制度

5つの自治体までの寄付ならワンストップ特例制度といって必要事項に記入をしてふるさと納税を行った自治体に返信するだけで確定申告が不要になる制度も有名ですね。

しかし、この制度に実はちょっとした落とし穴があり、特に兼業農家は確定申告をしないと損をしてしまう可能性があります。

今回はこの部分に触れていきたいと思います。

目次

ふるさと納税とは

毎月給料から天引きされている住民税や所得税がありますが、これは自分の住民票がある市町村に支払いがなされています。

その総額の一部を自分の住む市町村ではなく違う市町村へ支払うことで支払額の3割程度の返礼品を受け取れるのがふるさと納税制度です。

簡単なイメージとしてはもともと自治体に収めるはずの税金の一部を他の自治体に収めます。しかし給料からは通常通りの税金が引かれています。

ふるさと納税のイメージ 上:通常 下:ふるさと納税をした場合

するとその年ふるさと納税をした人は二重に税金を納めていることになってしまうので

翌年の住民税の天引きが前年のふるさと納税分の支払った分だけ減額するという形で値引きされます。

つまり実質2千円で返礼品分がたくさんもらえるめちゃくちゃお得な制度なのです。

これがふるさと納税の概要なのですがワンストップ特例制度と確定申告での税金の控除のされ方が違うことに注目してほしいのです。

所得税と住民税の計算方法

手取り年収(所得金額)320万円の場合を想定しましょう。この所得から差し引かれる金額に対して所得税額が決定します。

 社会保険料 67万円 専業主婦がいる場合 38万円 基礎控除 38万円

ざっくりとこれだけが所得金額から差し引くことができます。つまり課税される金額は

320-67-38-38=177万円となります。この金額で所得税が決まるので

国税庁HPより

 所得税の税率は5%となるわけですね。夫婦共働きの場合は配偶者控除が適応されないので10%の所得税率が適応になるわけですね。

住民税は課税される所得金額の10%の自治体がほとんどなので支払う所得税と住民税は

所得税 8.85万円 住民税 17.7万円+(均等割という名の基本料金約5000円)

ふるさと納税の限度額

ふるさと納税で控除が受けられる限度額の計算式は以下のようになります。

住民税の所得割額×20%÷{1.0-0.1-(所得税率×1.021)}+2000

これをさっき計算したものに当てはめると

17.7×0.2÷(0.9-0.05×1.021)+0.2=4.369万円

つまり43,690円のふるさと納税ができることがわかりました。
以降端数を切り捨てふるさと納税限度額を43,000円とします

また、比較的簡単にふるさと納税額が容易に算出できるエクセルシートを用意しました。6月にもらえる住民税の決定通知書と源泉徴収票が必要ですのでご自分で用意してください。

次にこのふるさと納税分で控除されている内訳をみていくと

所得税の控除分 確定申告の場合のみ適応


(ふるさと納税の寄附金額-2,000円)×所得税率×102.1%
= (43,000-2,000)×0.05×1.021
=  2093円

住民税の控除分(基本分)

(ふるさと納税の寄附金額 - 2,000円)×10%
= (43,000-2,000)×0.1
=  4100円

ふるさと納税の寄付金額の上限は総所得金額の3割

住民税の控除分(特例分

(ふるさと納税の寄附金額 - 2,000円)×10%
= (43,000-2,000)×0.1
=  4100円       

ふるさと納税の寄付金額の上限は総所得金額の3割

住民税の控除分(申告特例控除分) ワンストップ特例の場合のみ適応

住民税の控除分(特例分) × 所得税率×102.1%÷(90%-所得税率×102.1%)

ワンストップ特例制度の場合

はい、問題のワンストップ特例制度の場合ですね。

ワンストップ特例制度の場合は所得税の控除がありません。

ただし今回の場合は確定申告の場合と同じで控除額は43,000円です。

ではワンストップ特例制度によって影響を受ける部分はどこなのでしょうか。

それは住民税の控除分(特例分)の控除の上限が住民税所得割額の2割であることです。

4の申告特例分の控除の計算が3を元に算出されているため、3の金額が控除額の上限を超えた額になってしまうと4の控除額は1の控除額より少なくなってしまいます。

このためふるさと納税に支払った金額が大きすぎると以下のような問題が起こります。

条件

ふるさと納税の額 : 20万2000円

年末調整で計算した際の所得税率 : 20%

調整控除だけを差し引いた住民税所得割の額 : 50万円

確定申告の場合

 4万840円 +2万円 + 10万円 = 16万840円

ワンストップ特例制度の場合

 2万円 + 10万円 2万9,347円 = 14万9,347円

となり1万円以上、控除額に差が生まれてしまう事になります。

このため、自身の控除額の上限を知る事が大切になるのです

基本的に支払っている住民税の総額の2割と考えておけば上限額を上回る事はないですので

節税のつもりが余計な支出だったということにならないように気をつけましょう。

兼業農家が気をつける事

兼業農家は毎年年末に確定申告を行うので基本的にふるさと納税で所得税の控除を受ける事ができると思います。

しかし、会社からの給与だけでなく農業収入が黒字の場合はふるさと納税限度額もあがります。

一方で農業収入が赤字だった場合はふるさと納税の限度額が減ってしますので結果的にふるさと納税が無駄遣いになってしまったということにならないようにしましょう。

私の所属する生産組合は売り上げはすべて年末に確定と入金があるので年末になると経費分を計算して一気にふるさと納税を行っています。

まとめ

  • ふるさと納税の限度額の目安は住民税の総額の2割
  • 確定申告では所得税からの控除も受けられる、ワンストップ特例制度では住民税のみ控除される
  • 収入の多い人ほどワンストップ特例制度を利用するより確定申告をしたほうが良い場合がある
  • 毎年の収入に変動がある兼業農家はふるさと納税の限度額の見極めに注意が必要

ふるさと納税はうまく利用すれば本当にお得に地方の特産品を楽しめるのでぜひとも全国民が利用すべきものだと思います。

はるさめ

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