【第37回】真のリスク分散とは

今回は比較的内容的には難しいことを説明しますが、結論だけみるとそんなに難しくはないので気楽に読んでみてください。

目次

投資におけるリスクとは

「投資にはリスクが伴います」とよく皆が言っていると思います。そのリスクというのは具体的にどういうことか説明することはできるでしょうか

投資以外でのリスクの考え方としてはリスクとはその事象が起こる確率とその影響度だと思います。

例えば車を運転するとき、事故にあう(もしくは起こす)確率とその影響度を考慮しなければなりません。そういったリスクを踏まえたうえで自分が行きたい目的地に車で行くのかそうでないかを考える必要がありますよね。

では投資においてはどうでしょうか?

投資におけるリスクは株価の変動と為替レートの変動とそれが自分の資産に与える影響だと考えます。

このため投資をする際のリスクをなるべく小さくするためにすべきことを考えなければなりません。

それこそがリスク分散という考え方につながっていくのです。

金融資産を分散させる

投資にも株式、為替、債券、金、仮想通貨などなど色々な金融資産が存在します。

これらの金融資産の大きな違いは値動きの幅がそれぞれで異なることです。

ざっくり金<債券<株式<仮想通貨の順に値動きの幅が大きいです。

の値動きの幅によって受ける影響を分散させるために保有する金融資産を分散させる必要があります

ただし投資を始めたばかりの方には仮想通貨はお勧めしません。これを理解するには時間が必要だと考えるからです。

そして金融資産を分散させるにあたってもう1つ考慮しなければならないことがあるのです。

それが今回1番に説明したい相関係数というものが関わってきます。

相関係数とは

相関係数とは2つの異なる事象の確率に類似性がどれくらいあるかを示す指標のことです。

何言ってるかわかりませんよね(笑)

たとえてみると数学のテストの点数が高い人は理科のテストの点数も高いかどうかなどそれぞれの事象の関係性がどの程度なのかを数値で表すことができるものです。

相関係数は-1から1の範囲で表され、1に近づくほど正の相関が強いといい先の例で言うと数学の点数が高いほど理科の点数も高いということになり反対に-1に近づくと負の相関が強いといい数学の点数が高いほど理科の点数は低くなるという関係性が表されるのです。

これを金融資産に当てはめてみると、株式と債券の間にどのような相関があるのか金とはどうかなどいろいろな関係性が見えてくるのです。

ではいろいろな金融資産での相関係数を求めてみましょう。

金融資産の相関係数を求める

対象とする金融資産を独断と偏見でえらびそれぞれの値動きから相関係数を求めてみました。

対象とする金融資産は日本株式、米国株式、全世界株式、米国債券、金とし、それぞれの相関係数をもとめて表にしてみましょう。ここで日本株式は日経平均株価、米国株式はS&P500指数、全世界株式はVT、米国債券はAGG、金はGLDの値動きで計算します。

また値動きは過去10年分で相関係数を求めたいと思います。

これが結果となりました。赤系が正の相関で青系を負の相関で塗ってみました。

日本株式と米国株式と全世界株式はそれぞれで正の強い相関を示しています。

日本株が値上がりすれば米国株式も全世界株式も値上がりし、反対に値下がりすれば同じ影響を受けることになるのです。

反対に金は常にどの金融資産に対しても負の相関を示していることから株式や債券の値下がりの際には金の値段が上がるということが分かりますね。

以上のことから一番重要なことは

日本株、米国株、全世界株式を分散として保有していてもリスク分散にはならないということです

株式以外の債券と金をも保有することが真のリスク分散といえるということが分かります。

全世界株式 VT

ここで初めて出てきたETFですので解説しておきます。

VTとはバンガード社が運用している正式名称バンガードトータルワールドストックETFといいます。
このファンドの資産総額は約130億ドル(日本円で約1兆3700億円)で47か国、約8000銘柄を保有し運用しています。

構成としてはアメリカが約6割を占めています。このためにS&P500との相関が強い理由でもあります。

セクター構成はテクノロジーが多く、米国市場の時価総額のトップを占めるのがGAFAMなのが理由だからですね。

配当金も少なからず受け取ることができ2020年8月現在は1.98%の利回りとなっています。
キャピタルは10年間で年間平均利回り約9%と非常に優秀なリターンを出しています。また経費率は0.08%と非常に少ない信託報酬で運用することができます。

楽天証券での購入は買い付け手数料が発生しないので定期積立に非常に向いています。

株式投資のポートフォリオとしましてはこのVTを1つだけの保有でも十分に分散されたETFだと言えます。

米国債券 AGG

米国債券ETFのAGGを紹介します。これはブラックロック社が運用する米国債券ETFで運用総額はなんと約790億ドル(日本円で約8兆3750億円)になります。債券とは国や会社が発行しているものでいわゆる発行元の借金です。国が発行している債券を国債、会社が発行している債券を社債といいます。

おおくの債券が存在する中でムーディーズやS&Pという大手の格付け会社があるのですがそこが投資適格債券をランク付けしており、その中でも最高ランクのAAAを含む債券で構成されています。

また、このAGGの大きな特徴であり魅力が、毎月配当金が支払われることです。配当利回りは2020年8月現在で2.37%となっており、この配当金を再投資に回した時のパフォーマンスがトータルリターンとして表示されていますが非常に良い結果を出していますね。経費率は0.05%です。

値動き自体はそんなに大きく動くことがないのが債券ETFの特徴なのではないかと思います。コロナショックの際も価格が下落したもののほかのETFと比べると下落率はかなり小さかったです。

米国株式とは弱い負の相関があることから米国株を多数保有している場合はこのAGGを持つことでリスク分散につながるため結構おすすめなETFだと思います。

金 GLD

金にもETFが存在しこれはステートストリート社が運用するGLDというものです。
運用総額は約774億ドル(約8兆2000億円)で世界最大の金運用ETFです。配当金は金の現物のため全くなくキャピタルゲインでしかリターンを得ることができないのが特徴です

値動き自体もほとんど動かず約40年くらい保有するとやっと2倍になる程度です。最大の特徴は金自体が有限な資産のため物価の上昇に応じて価値も上がるため非常にインフレに強いという特徴があります。投資の格言にも有事の金といわれるくらいですのでポートフォリオに少しくらいならい入れておいたほうがいいのかなと考えられます。

ただし保有資産が10億円を超えるような人がそのうちの10%を金で保有してリスクに備えるというような目的で買われるものだと思っているのでほとんど超富裕層向けだと思って結構です。

私自身は全く保有していません。そんなに資産あるわけありませんしね(笑)

相関係数の注意点

今回求めた相関係数には注意してほしいことがあります。

それが為替リスクです。今回の相関係数はあくまで日本株では円での動き、米国ではドルでの動きのみを反映して計算しています。つまり円高円安は考慮されていません。

あくまで日本の市場の動きと米国市場の動きを比べるためであり、為替変動も入れてしまうとややこしくなるのでなるべくシンプルに考えるためにこのようにさせてもらいました。

まぁ実際は米ドルも日本株式と弱い相関はあるようなので似たような動きはするとは思われますが。

また、過去10年間の値動きでの相関係数であり切り取る時間単位によっては相関係数も変わってきます。ですが長期運用を前提として私は資産運用をお勧めしているためこれで十分だと判断しています。

まとめ

  • 金融資産には株式、債券、金、仮想通貨と様々存在しそれぞれで値動きの幅が異なる。
  • S&P500の値動きは全世界の先進国株式と強い正の相関を示す。
  • 金はほかのすべての資産に対し負の相関を示す。
  • 真のリスク分散とは相関係数を加味して考慮されるべきである
  • 個人的には株式資産と債券で保有するのが好み

株式資産としては米国が動けばすべてに影響がある以上、すべて米国株で保有すればいいかなというのが私の考えです。

また米国株式をメインで持つ以上リスク分散としては米国債券を一部保有することにしました。金とは異なり配当金が毎月出るので生活費の足しにすることも、再投資に回すことも考慮できるからです。

今現在の米国株のポートフォリオはこのようになっており債券の保有率はまだ低めとなっています。

これは自分のリスク許容度からの選択であり、将来的にどこまで債券の割合を増やそうかという話をいずれしていきたいと思います。

よく見ると個別株の割合がすごく高いのはまだちゃんとわかっていなかった頃の名残ですね(笑)

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